「東京・下町自転車」 | (第三章:「王将」と「日本再生酒場」) | |
門前仲町の缶詰バーでスペインの青い空を瞑想しているうちに、カウンターの両サイドは後から入ってきたお客に囲まれていた。どうも煙いと思ったら、右手のお客は喫煙者で煙はそこから流れていた。 近年、北京や上海の大気汚染は深刻で、もはや健康被害に留まらず、農作物の成長不良や精密機器の製造歩留まり低下にまで影響が及んでいるらしい。瞑想はいつの間にか中国のPM2.5で霞(かす)んだ上海の風景に変っていた。 最近、日本人の中国に対する好感度は甚(はなは)だ低い。最新の日中共同世論調査によれば、日本人の93%が「中国に良くない印象を持っている」と答えた。尖閣諸島問題が影響していないとは云わないが、国境あるところに紛争があるのは理解できる。しかし、本質は傍若無人でエチケット知らずの行動にあり、小笠原沖での珊瑚密猟などは絶対に許せない。ただし、傍若無人と言えば日本のオジサン達も、若者達から批判の目で見られていることを忘れてはならない。 話がだいぶそれてしまったが、非喫煙者にとって煙草の煙は我慢ができない。少しさらされただけで髪や衣服にヤニの匂いが移ってしまう。これにはたまらず店を出て、次の行き場所を探すことになった。 永代通りに戻ると道路の向こうに「大阪王将」のネオンが光っていた。同じ通り沿いには「餃子の王将」の店舗もあって、これは少し目を疑う光景である。 王将の“のれん分け戦争”がついに関東に上陸したという話を聞いたのは昨年の秋、まさかここで両店の熾烈な戦いを目(ま)の当たりにするとは思っても見なかったからだ。「大阪王将」が「餃子の王将」の本拠地である京都に乗り込んだときは、どんなだったろうかと背筋がぞくぞくする。 「餃子の王将」は以前から関東各地にあって、よく利用したことがある。中生ビールが460円、餃子六個が240円で千円ちょっとで十分飲める。一方、大阪王将には入ったことがなく、興味津々(きょうみしんしん)のお店であった。 結局、暖簾を潜ったのはその中間にある「日本再生酒場」という酒場だった。店の前には山口の銘酒「獺祭」の暖簾が掛けられていて、これに引かれたという理由もあった。焼き鳥屋のようであるが使う肉は豚と牛。メニューには、ホルモン好きの人達がたまらなく好きそうな部位が並んでいた。頼んだのは脂の多い豚バラの串焼きで、辛目の吟醸酒「獺祭」ととても相性が良い。 このお店には、沖縄に嵌(はま)っている店員がいて、お金が貯まったら沖縄に出掛ける生活を続けているのだと言う。LCCが出来てから、沖縄にも随分安く行けるようになった。沖縄移住を希望する若者は少なくないが実態はそう甘くない。総務省統計局総務省統計局「平成25年 住民基本台帳人口移動報告年報」によれば、沖縄への転入者24,517人に対し、転出者24,486人(99%)でほぼ同数。この中には沖縄出身者(うちなー)の数値も含まれるため、純粋な移住者(ないちゃー)の動きは不明だが、「3年以内に6割が内地に戻る」(平成26年度第2回 移住推進協議会議事概要)とも言われている。 |
(このシリーズは、iPadで楽しめるように設計されています。喫茶店でお茶を飲みながら、ゆるりとした気分でお楽しみください。) 東京下町を探訪する他の記事(「東京・下町自転車」)や「沖縄花だより」、「紀行・探訪記」、「真樹のなかゆくい」へも、是非訪づれてください。 |