「東京・下町自転車」 (第五章:門前仲町ラーメン)

「麺屋 純風」

第五章:門前仲町ラーメン

 飲んだあと、「シメ」といえばラーメン。ここ門前仲町付近で有名なのは「こうかいぼう」、さっそく行って見ることにした。高速道路の下を潜り、深川一丁目交差点の手前に来たところに、人だかりのするラーメンやが会った。店の名前を確認してみれば「弁慶」のニ文字。「あぁ、ここが門前仲町の弁慶か」、男は静かに呟(つぶや)いた。 弁慶は、千駄ヶ谷にあるホープ軒から分かれたお店で、東京チャッチャ系豚骨醤油ラーメンの代表である。

 大量の背油が浮いた熱々の豚骨醤油ラーメンに、たっぷりの刻みネギと黒胡椒を振りかけたらどれだけ美味(うま)いであろう。特に今頃の寒い時期は、体に染みるに違いない。しかしながら、いま目指しているお店はここではなかった。

 深川一丁目交差点で葛西橋通りを東に進むと「こうかいぼう」の看板が見えてきた。門前仲町で1、2を争うラーメンとはどんなだろうと心が騒ぐ。店の前まで来て見れば、閉店の看板がドアの前に掛けられている。ドアの奥にはまだ人影があり、思わず「ええぇ〜」と叫べば、中から綺麗で愛想がいいと評判の奥さんが出てきて「すみませんねぇ〜。スープ終っちゃったんです。」とのこと。

 ショックを隠せずトボトボ戻れば、すぐ隣にもラーメン屋の看板があった。「こうなったらどこでもいいや」と投げやりになって入ったお店は「麺屋 純風」。 期待せずに入った割りには、悪くない。麺は平打ちの縮れ麺でスープによく絡(から)む。店内は広く、カウンターの横には座敷があって、ここであれば焼豚やメンマをつまみにビールを飲むにも最適の環境だった。

 門前仲町でラーメンと言えば、これだけでは終らない。今来た道を戻ったところには「麺屋 緑道」(えんどう)、富岡八幡宮の参道近くまで行けば「つけ麺 紫匠乃」(むらさきたくみの)もある。

 緑道(えんどう)の店主は、平井で大勝軒系の大黒屋本舗の店長を勤めていた方だと言うことで、ひょっとしたら以前に会っていたかも知れない。「えんどう」という読みも、店主の名前が遠藤だからと言うことらしい。

 このネタを教えてくれたのは緑道で一緒になったサラリーマン風の客で、とにかく東京のラーメンを熟知した方だった。「他に近くでお勧めのラーメンはどこですか?」と聞けば、木場駅近くの麺屋 吉左右(めんや きっそう)を勧めてくれた。





(このシリーズは、iPadで楽しめるように設計されています。喫茶店でお茶を飲みながら、ゆるりとした気分でお楽しみください。)
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