真珠道(まだまみち)探訪記   (後篇<2>:石川町)へらさぎ(箆鷺)

 「小禄ナカミチ」を歩くとすぐのところに、ハル石(印部石)や力石が奉られた小さな広場があります。昔はこの広場から、鰻湖のきれいな風景が臨めたということです。 ここのハル石には「ユ:川原○○」という文字が彫られています。ハル石は領土測量のために測量点に置かれた石で、もともと神の宿る信仰の対象ではありません。近くの川原に放置されたハル石を誰かが拾ってきて、そこに置いたのではないかと思います。「イワシの頭も信心から」とまでは云いませんが、今ではしっかり神が宿り、立派な拝みの対象になっています。


後原ヒージャー小
 さらに歩くと、まもなく「ゆいレール」の走る大きな通りにぶつかります。「ゆいレール」の下を潜(くぐり)り抜け、今歩いてきた通りを振り返ると、左角が眼鏡市場の店舗、右が後原共同住宅で、その手前に後原ヒージャー小(ぐゎー)が見つかります。

 後原ヒージャー小(ぐゎー)は、道路拡張で横に移されたと聞きました。 しかしながら湧水だけは言う事を聞かず、もとあった場所から湧きだしているのだと云うことですが、これほどまでの頑固さは会社に勤める自分にとって、見習ってよいものかどうかよく分かりません。[雨上がりの証拠写真]

 ここから先は、アメリカ占領下時代にペリー区と呼ばれていた山下町に入ります。第二次世界大戦当時の陸軍大将山下奉文(ともゆき)を連想させるとして、「黒船来航」で知られるアメリカ海軍マシュー・ペリー提督の名前に変えたのだという、笑うに笑えない大人げない歴史が刻まれています。 ペリー小児科、ペリー保育園、ペリーもち屋、ペリーストアなどの名残が、当時を今に伝えています。


真珠道(まだまみち)
 通りから少し奥にあるぺリー美容院の手前の路地を左に入ると、とたんにあたりの空気が一変します。この路地こそかつての真珠道(まだまみち)で、まさに遠い琉球の時代にタイムトリップしそうな雰囲気が漂います。

 奥に階段があり、そこを登ってさらに奥へと足を踏み入れると、那覇市内とは思えない山道のような小路に変わります。この路は、市立垣花小学校のグランドを見下ろす崖の上で行き止まってしまいます。

 真珠道の終点である屋良座森城(やらざむいぐすく)まではあと一息で、一旦、奥武山公園沿いの道に出ようと思います。それには、途中の急峻な崖をおりていく必要があります。奥武山公園付近は一面の海だったということですが、この崖には、日々打ち寄せる波で削られた海岸の面影が残っています。


落平(ウテンダ)
 崖を下ったところは、沖縄県住宅供給公社の建物で、近くに美味しい水が湧き出すことで評判の落平(ウテンダ)とよばれる湧水があるというこで探しに行きました。直接海に注ぐ湧水で、汲んだ水を船に積んで対岸の町に売りに行ったという話も残っています。

 建物付近を探し廻って・・・びっくりです。建物の近くどころか建物のなか、しかも 6,600V(ボルト)高圧受電室横から湧水が流れてきます。 恐らく、水場の真上に公社の建物を建てたのだろうと思いますが、優秀な(まともな)建築デザイナーに恵まれなかっただけでなく、周りの空気を読めていないそうとう乱暴な建て方です。

 この近くには、今からおよそ3万2000年前(旧石器時代)の山下町第一洞穴遺跡があります。「恩納村歴史を探る旅」で紹介した仲泊遺跡でも数千年前でしたから、これが本当だったら沖縄最古。沖縄南部の八重瀬町で1万8000年前に生活していた港川人ですら真っ青です。この遺跡は、沖縄が東南アジアなどの南方地域を源郷とする旧石器文化圏に属していた証(あかし)となる大変貴重なものらしいのですが、住宅地の一角にひっそりとあって、簡単に見つけることはできません。 この地は琉球王国時代にも、中国および東南アジアとの交易拠点として大きく栄えて来ましたが、そのルーツが遥か石器時代にまで遡(さかのぼ)っていたとは驚きです。


沖縄セルラースタジアム
 落平の向かいには、沖縄セルラースタジアムがあります。昨年から巨人軍が春季キャンプを張るようになりました。沖縄には巨人ファンが多いらしく、去年の巨人・楽天オープン戦では1塁側内野席(巨人のホーム)のチケットは、とうとう手に入りませんでした。

 そのためこの時は、三塁楽天ベンチ側からの巨人応援となりました。しかしながらこのところ、オーナー会社の御家騒動があまりにひどかったので、今後しばらく読売巨人軍の応援は控えることにしています。



前篇<1> 前篇<2> 中篇<1> 中篇<2> 後篇<1> 後篇<2>(この場所) 次回は最終編です。ご期待ください。

(このシリーズは、iPadで楽しめるように設計されています。喫茶店でお茶を飲みながら、ゆるりとした気分でお楽しみください。)
ついでに、他の「紀行・探訪記」へも、是非訪づれてください。