真珠道(まだまみち)探訪記   (前篇<2>:金城石畳道〜識名坂)とぅらぎーまやー


「石畳茶屋 真珠」
 園比屋武御嶽に戻って、南の方向に進むと真珠道の案内板が見つかります。その先の坂道はシマシービラ(島添坂)というようで、なじみのない名前です。 坂をまっすぐ下ると「石畳茶屋 真珠」というおしゃれな喫茶店があり、コーヒータイムにちょうどよい時間です。

 このお店の「マンゴウかき氷」の美しさは圧巻で、見ているだけで汗が引っ込みます。 なお、ここでオリオンビールを頼んでしまった人はゲームオーバー、これにて「真珠道探訪」の旅は終了です。

 さらに坂を降りて車道(赤マルソウ通り)を横切ると、そこから先が金城坂(カナグスクヒラ)です。 赤マルソウはみそ醤油の製造会社で、平成6年に糸満市西崎町に移転しました。 この赤マルソウこそオリオンビールの設立母体でもあり、沖縄のライト感覚なビールを牽引してきました。 瑞泉酒造もこの通りの先にあって、こちらではかたくなに琉球泡盛を守り続けています。


金城町石畳道
 金城坂は、真珠道の面影を今に残す「金城町石畳道」として大変有名です。 金城町石畳道は、それ自身が貴重で雰囲気漂う通りですが、周辺には樹齢200年の大アカギ、金城大樋川(かなぐしくうふふぃーじゃー)などの名所も控えています。 NHK朝の連続テレビドラマ「ちゅらさん」の、那覇の実家の舞台にもなりました。

 ここは気持ちの良い時をゆるりと過ごせる場所で、道の途中の金城村屋(かなぐしくむらや)と呼ばれる平屋建ての建物で休むもよし、その向かいにある沖縄そば屋(ゆくい処石畳)で腹ごしらえするもよし。 ここでも、ビールを飲んでしまった人はゲームオーバーです。

 さらに石畳を降りるとバス通りに出て、金城石畳通りはそこで終わります。出口付近には、首里殿内(すいどぅんち)という沖縄懐石料理店があり、そこは一度食事をしてみたいと思っているお店です。


金城橋のシーサー
 バス通りを横切ると金城橋があります。金城橋の欄干には6体の可愛らしい狛犬が並んでいました。これから向かう識名宮の狛犬と同じ構図で毬を抱えているところから、おそらく神社に置かれている狛犬であろうと思います。 口を開けて吠えている方がオス、きりりと口を締めている方がメスで、道の両脇でペアを組んでいます。

 ここから識名坂(シチナンダビラ)の登りが始まります。識名坂付近には遺念火(イニンビ)が出るという噂があるため、坂の上まで、後ろを振り返ることなく一気に駆け上がることにします。

 遺念(イニン)とは沖縄の方言で亡霊のことで、遺念火は水木しげるの妖怪図鑑にも出てきます。妖怪とは、人間の理解を超える奇怪で異常な現象全般をさしており、必ずしも人に危害を加えるものばかりではありません。

 「識名坂の遺念火」(シチナンダビラヌイニンビ)は有名で、非業の死をとげた仲の良かった豆腐屋夫婦の亡霊です。 一つの遺念火が金城橋から識名坂を上って行き、もう一つの遺念火が識名坂を下ってきて坂の途中で一緒になり、付近を仲良く漂った後、どこへともなく消え去ってしまうのだそうです。 怖いもの見たさもあり、坂の途中で恐る恐る振り返ると金城橋は遥か下で、夫側の遺念火になった気分です。[遺念火目線]


金城町の街並み
 ここらは坂の序の口で、まだまだ坂は続きます。坂の途中からでも、石畳道のあった金城町の街並みが一望できます。市立松城中学校裏門の横を通り、頂上にたどり着いたころは全ての体力が消耗して、身動きできない状態でした。

 ここらで、近くにいた茶トラの猫(とぅらぎーまやー)と一緒に休憩(なかゆくい)です。 蛇足ですが、「まやー」は猫のことで、犬は「いん」と言います。 沖縄では、猿が身近にいなかったと見られ、犬猿の仲は「いんとぅまやー」(犬と猫)と表現するそうです。



前篇<1> 前篇<2>(この場所) (引き続き、識名宮まで足をのばします。)

(このシリーズは、iPadで楽しめるように設計されています。喫茶店でお茶を飲みながら、ゆるりとした気分でお楽しみください。)
ついでに、他の「紀行・探訪記」へも、是非訪づれてください。