豊見城市 村獅子(シーサー)探訪   (中篇)

 保栄茂(びん)のシーサーはペンギンに似ています。 保栄茂は、豊崎から豊見城南高校の前をまっすぐ進んだ丘の上にある集落で、瀬長島や東シナ海の海岸線が一望できる景色の良いところです。 前篇の田頭(たがみ)もそうでしたが保栄茂(びん)は全く読めず、「ほ・え・も」としか読めません。 英吉利と書いて「イギリス」、伯剌西爾と書いて「ブラジル」と読ませるようなものです。

 沖縄には読めない地名が多すぎます。 奥武山(おおのやま)、奥武島(おおじま)、喜屋武(きやん)なども読めない地名のひとつです。金武(きん)に至っては、「きんぶ」と読んでしまいます。


【保栄茂のシーサー】

 沖縄では「武」という字を「ん」と読むのだと言ってました。 「ん」という漢字の存在は、「0(ゼロ)」という概念を持つに等しく、沖縄の祖先は高等民族だったのかもしれません。 発音しない字があるなんて、フランス人になったような気分でもあります。

 真玉橋(まだんばし)も「まだまばし」と読んでしまいます。 ここは、首里城から金城坂や識名坂を下り、小禄を通って那覇港(垣花)までを結ぶ真珠道(まだまみち)の中間地点だったようで、国場川を渡る五連アーチの石橋が建設されていました。造形的にも工学的にもすばらしい建造物だったようです。


【イリヌシーサー】


【アガリヌシーサー】

 真玉橋の麓では、イリヌシーサー、アガリヌシーサーという2体のシーサーが村を守っています。 沖縄では西を「いり」、東を「あがり」と言い、2匹のシーサーはそれぞれの方角をしっかり担当しています。 ちなみに、北は「にし」と言うそうで、とても混乱させられます。

 アガリヌシーサーは目が青銅で出来ていて、その意味では手の込んだ、お洒落で可愛らしいシーサーです。 このシーサーは、村の中を丹念に探し廻らないと簡単に見つけることは出来ません。 このシーサーには、意思に反して連れ去られた妻を想う夫の思いが込められているという悲しい話があります。

 一方、イリヌシーサーは極めて出来の良い精悍な男前のシーサーで、那覇東バイパス沿いの分かりやすいところにあります。 イリヌシーサーは、漫湖に住む森の形をした人食い怪獣(ガーナームイ)から村を護るために作られたと言われています。

 このガーナームイは、ゆいれーる奥武山公園駅から東200m付近、飲食店「能登の海」の裏手にある住宅に囲まれた小さな森のことで、昔は意思を持って動き廻り、相当な悪さをしていたようです。 当時は漫湖に浮かぶひとつの島だったそうで、随分と風光明媚なところだったようです。[沖縄テレビ スーパーニュース]

 漫湖といえば、ラムサール条約にも登録された湿地帯でマングローブの群生地になっていますが、そのマングローブの伐採が始まりました。 マングローブが繁茂しすぎて、水鳥の飛来域が減少してしまったからだそうです。 近くにある環境省管轄の水鳥・湿地センター職員に「そんなことしていいの?」って聞いたら、ここのマングローブは豊見城市が植樹したもので、昔から自然に生えていたものではないからいいのだそうです。[伐採の写真]




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