【6月】 沖縄花だより | (中編:比地大滝と大国林道の甘い湧き水) | |
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昨日は奥間のホテルに一泊し、今日は朝早く、近くの比地大滝までトレッキングすることにしました。比地川の流域は自然が手付かずに残されていて、ノグチゲラやアカヒゲに出遭えるかもしれないと思うと、胸が大きく高鳴ります。 比地大滝には、キャンプ場の管理棟で入場料500円を払って入ります。沖縄での500円は少し高いようにも思えますが、環境整備のためと言われればやむを得ないような気にもなります。大滝まではゆっくり歩いて40分、遊歩道は去年の台風16号で大きな被害を被り、途中に掛けられた高さ17m・長さ50mの大きなつり橋も流されてしまったそうです。[台風被害跡] 流された区間は沢の中を歩くようにルート設定されていて、余計にネイチャートレッキングの雰囲気たっぷり、考え様によってはラッキーです。水辺に住む綺麗なイトトンボの姿も真近に見ることができました。小鳥のさえずりもあちらこちらから聞こえますが、残念ながらその姿は見えません。砂地部分には、たくさんの蝶も群れていました。給水行動だろうとは思うのですが、どの蝶も一様に陽の当たる方向を向き、仲良く日向ぼっこをしているようにも見えます。[アオスジアゲハ] 遊歩道脇の崖には、落石防止用にネットを張った部分がありますが、ネットを支えるワイヤーを見れば・・・・なんということでしょう。 生木に直接縛り付けていて、しかも樹皮に食い込んでいます。だいぶ昔の施工でしょうが、ウチナンチューのテーゲーさがこんなところで実感出来るとは思いませんでした。[痛々しい樹木] |
整備された遊歩道 | リバートレッキング | 比地大滝 |
ついに大滝が姿を現しました。ジャングルの中から迫り来る落差25.7mの大滝は、まさに荘厳。その威風堂堂たる雄姿には、疲れを忘れしばし見とれてしまいます。 比地大滝でマイナスイオンを十分に浴びた後は、この上流の大国林道に車で向かいます。目指すは比地の湧水、甘い湧き水として根強い人気の湧水です。まさにヤンバルの大自然を満喫できる場所で、もちろん携帯電波は圏外。そこで車がパンクでもしようものなら自分でジャッキアップする以外にありません。 途中の比地川を横切る大きな橋の上で小休憩、ここはヤンバルの雄大な山々が一望できる大好きな場所の一つです。橋から下を覗いてみれば、そのまま大自然に吸い込まれそうで足がすくんでしまいます。そしてこの時期、新緑で覆われた山々のあちらこちらにはイジュの木が白い花を咲かせていました。[比地川を渡る橋] 目指す湧水はすぐ近くです。手前の林道のカーブに車を止めて、湧水までは少し歩いて行くことにしました。林道の周辺はヘゴの木やイタジイで覆われ、涼しげな風が吹き抜けていきます。そして湧き出る水を手ですくい口に含んだとたん、やんばるの大自然が体いっぱいに染み渡ります。[比地の湧水] |
アオスジアゲハ/イシガケチョウ | リュウキュウハグロトンボ | ヘリグロツユムシ/ルリモントンボ |
山を下りたら国道58号線で帰ります。 途中、大宜味村に来たあたりで「cafe がじまんろー」の看板が目に入りました。このへんちくりんなお店の名前は何処かで聞いた事があります。カベルナリア吉田の著作した「沖縄自転車」に出て来たお店です。本の第一刷が2006年ですから7年も経った計算です。どうなっているか確認しない訳には行きません。 山道をどんどん上って行くと、迷ったのではないかと思うあたりに絶妙に案内板が配置されていて、目的地には、以外にすんなり到着しました。敷地入口から玄関に向かうアプローチは本でみた写真のとおりです。「こんにちは!」という挨拶をしてドアを開ければ、「はーい!」という明かるい声。迎えてくれたのは、このお店のおばーちゃんでした。店に入れば、開け放たれたテラスから庭の向こうは大きく開け、シークヮサー畑越しにやんばるの山々(「ぼーじ森」と「くゎーだき森」だそうです。)が望めます。[がじまんろー] 縁側の端の席を陣取り、足を伸ばして寛(くつろ)いでいると、「みなさん、そうやってのんびりしてるんですよ!」といいながら、マンゴージュースを運んできてくれました。注文したのは1,000円の「ぼろぼろジューシーセット」。沖縄でジューシーと言えばヒジキの入った炊き込み御飯が一般的、それゆえ「ぼろぼろジューシー」は、肉そぼろか何かがふんだんに添えられた豪華な炊き込み御飯かと思いきや、米の粒がぼろぼろになるまで煮込んだいわゆる雑炊でした。 もともとジューシーとは雑炊が訛(なま)った言葉だそうで、正確には炊き込みご飯は「くふぁ(固い)ジューシー」、雑炊は「やふぁら(柔か)ジューシー」と云うのだそうです。やがてやって来た「ぼろぼろジューシー」には、ぼろぼろになったお米とカンダバー(芋の葉)、カボチャなどの健康野菜やキノコなどがふんだんに入っていて、如何にも身体に良さそうです。[ぼろぼろジューシー] あらためてお庭を見廻してみれば、ここは薬草とお花の宝庫です。庭には立派なイジュの木もあって今が満開、ノボタン、ピンクのハビスカスなども華麗に花を咲かせています。花から花へ蝶が飛び交い、カラスまでもが低空で横切って行きました。カナヘビもちょこっと顔を覗かせましたが、挨拶する間も無くすぐに隠れてしまいました。 |
イジュの花 | ノボタン | ピンクのハイビスカス |
お店に置いてあった今月創刊の雑誌「うちなん」をぱらっとめくってみれば、なんとさっきのおばあちゃんが庭で薬草を摘んでいる姿が、堂々の見開き一面で掲載されています。ここは、カベルナリア吉田が訪れた7年前から、ずーと愛され続けてきたお店でした。やんばるは都会の人が忘れ掛けていた日常の安らぎを与えてくれる場所であると思います。これからも花便りを通してどんどん取り上げて行きたいと思います。 |
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(このシリーズは、iPadで楽しめるように設計されています。喫茶店でお茶を飲みながら、ゆるりとした気分でお楽しみください。) ついでに、他の「沖縄花だより」や「紀行・探訪記」、「真樹のなかゆくい」へも、是非訪づれてください。 |