【6月】 沖縄花だより | (前編:よへなアジサイ園) | |
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5月15日の沖縄タイムスの紙面に目を通すと、「沖縄気象台は14日午前11時ごろ、沖縄地方が梅雨入りしたとみられると発表した。」とありました。これで春分から続いた「うりずん」と呼ばれる過ごしやすい季節も終わり、6月中旬まで鬱陶(うっとう)しい日々が続きます。そんな中で元気なのはアジサイの花。本部町からは、もうすぐアジサイ見頃の便りも届いていて、満開になるまで待ちきれません。 5月26日の日曜日、満を持してアジサイの様子を見に出掛ける事になりました。 ところで「満を持す」という表現も、「万を辞す」に書き間違える人が多いそうです。これはこれで、万事を辞退してひとつの物事に集中する的な意味で「あり」だと思えそうですが、正解は「満(=弓を一杯に引いた状態)を持す(=維持する)」です。 |
「そば処 玉家」 |
燃料高騰の折、ガソリン1,000円券付きレンタカーを借りて出発です。途中、朝食をとろうと高速道路の中城パーキングエリアに寄って見れば、「そば処 玉家」の幟(のぼり)が目に入りました。玉家といえば、沖縄そば王決定戦で二代目そば王に輝いたお店。 「え!本当?」という疑いの念を捨てきれず、カウンター越しのおばさんに「ここは、美味しいそばで有名な、あの玉家ですか?」と訪ねれば、ちょっと間があってから「はい!」という自信無さそうな返答が返って来ました。 あの間はいったい何だろうと気になりつつも、頂いてみれば確かに玉家のおそばで、フーチバー(沖縄のよもぎ)をたっぷりトッピングして頂けば、草原の香りが口一面に広がります。 |
お腹がいっぱいになったところで中城パーキングエリアを出発、高速道路を許田で下りたら、そのまま本部町を目指します。 |
よへなあじさい園 |
沖縄でアジサイといえば、本部町伊豆味の「よへなあじさい園」。今年カジマヤー(97歳のお祝い)を迎える饒平名(よへな)ウトさんが60歳から趣味でこつこつ植え始めたアジサイ畑は、いまでは3千坪に8千株・25万輪もの花が咲いているそうです。 しかし、だれが・どのように花の数を数えたのかと考え始めると、夜も眠れません。 ここのアジサイはやや小玉のヒメアジサイ、日本固有のヤマアジサイの系統です。アジサイは、土の酸度や咲き具合によって花の色が変化していきます。そのためか花言葉は「移り気」、美しさと冷淡さも兼ね備えており、うっかり食べると中毒を起こします。(平成20年8月18日 厚生労働省医薬食品局食品安全部監視安全課長通知) |
よへなあじさい園からさらに奥深く山道を入っていくと、「やちむん喫茶シーサー園」があります。ここは、古民家を利用した癒し系のお店で、たいがいのガイドブックに大きく掲載されている「わ」ナンバー御用達(ごようたし)のお店です。 |
道の両脇は、初めて見る名前の知らない赤い花が満開です。後(のち)に沖縄花図鑑で調べてみれば、緋桐(ヒギリ)という植物で、花言葉は「幸せになりなさい」、初対面から高い目線のお花でした。 赤い花の向こうには、目指す「やちむん喫茶シーサー園」が見えました。店の二階に上がって、とりあえずコーヒーとチンピンを注文。「チンピン」は沖縄の伝統おやつでいわゆるクレープ、黒糖のほんのりとした甘さが沖縄の素朴さを感じさせる一品です。二階と同じ高さにある屋根の上には表情の違うたくさんのシーサーが置かれて、見ていて飽きることがありません。 そのなかに、礼儀正しい律儀なシーサーがいるという噂を聞いていましたが・・居ました。玄関から入ってくる邪気を威嚇して追い払うというシーサー本来の使命を放棄した、高級フレンチレストランのウェイターのようなシーサーです。その周りにいるシーサー達も、見ているうちにだんだん愛しくなって、ついつい写真に収めたくなるのは私だけでは無いようです。 シーサー園の魅力は喫茶空間だけではありません。1万坪とも云われる広大なお庭には、100体以上のシーサーと、アジサイ、ベゴニア、ノボタンなど、たくさんの季節の花が溢れていました。 シーサー園でまったりした後は、すぐ近くの「ざまみ農園アジサイロード」に顔を出すことにします。入口には、ここにもシーサーが構えていて、そこから奥に続く道の両脇にはアジサイの花が延々と続いていました。ここには白いアジサイが多く植えられていて、これは小さい頃の伊豆味はこうだったと語る園のオーナーのこだわりです。 ガクアジサイの一画もありました。アジサイの多くは日本原産で、縁(ふち)にだけ花を配したガクアジサイが原種であると言われています。ガクアジサイには西洋アジサイにはない素朴な趣があって、日本の「わび・さび」には、どう考えてもこちらの方がベストマッチすると思います。 |
緋桐(ヒギリ) やちむん喫茶シーサー園 ざまみ農園アジサイロード |
ここは開園して今年で4年目、知名度はまだまだよへなあじさい園に及びませんが、オーナーの想いは随所に伝わり、そのうち伊豆味の顔になりうる農園です。 |
ピザ喫茶 花人逢と円錐カルスト ピザ喫茶 花人逢 |
だいぶお腹もすいたので、次は、本部町字山里にあるピザ喫茶「花人逢(かじんほう)」に寄ろうと思います。山里は円錐カルスト地形の地として有名です。 一般的にカルスト地形といえば、秋吉台のカルスト台地を思い浮かべます。凹型の窪みは、ドリーネとかウバーレとかと高校の地学で習ったような気がします。これに対し山里のカルストは凸型で、熱帯や亜熱帯にはよくみられる地形だそうですが、日本には沖縄にしか無いそうです。 それにしても凸凹(でこぼこ)が立派な漢字であるとは恐れ入りました。卍(まんじ )もれっきとした漢字ですが、これらの正しい書き順を知る人はそうそういないと思います。 花人逢(かじんほう)に着きました。ここも観光客には有名で、入り口には 十数人の待ち行列が出来ています。仕方ないので、そこに用意してあったオセロや知恵の輪で時間をつぶすことにします。 知恵の輪に本気になっている間に順番がやってきました。注文したサラダは円錐カルデラを彷彿させる大盛りで、ピザに至ってはもはやチーズの洪水です。さらにお店の広いテラスから臨む濃いブルーの東シナ海は、脳裏では、冒頭の畑一面に広がるアジサイ園の風景と被(かぶ)ります。 |
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(このシリーズは、iPadで楽しめるように設計されています。喫茶店でお茶を飲みながら、ゆるりとした気分でお楽しみください。) ついでに、他の「沖縄花だより」や「紀行・探訪記」、「真樹のなかゆくい」へも、是非訪づれてください。 |