「東京・下町自転車」(東京桜だより)
開花直前:中編


国立劇場のコマツオトメ(小松乙女)

 靖国神社を出ようとした時に目が合ったのは一組の狛犬、どこかで見覚えのある立ち姿です。思い起こせば那覇市「与儀公園」のシーサーにそっくりです。参道入口にある狛犬も、那覇市福州園のシーサーと雰囲気が被ります。狛犬もシーサーも、起源はエジプトのスフィンクスにあるという説を聞いた覚えがありますが、起源にまで遡(さかのぼ)らずとも、そもそもが良く似ています。

 九段下といえば人気のラーメン店「斑鳩」、お腹も空いてきたので顔を出してみようと思います。お店に向かう途中にあったのが和洋九段女子高校、NHKの朝ドラ「マッサン」にハナ役で出ている小池栄子の母校です。すぐ近くには白百合学園もあって、ここはお嬢様達の聖地に違いありません。


ラーメン「斑鳩」

 ところで、当のラーメン店「斑鳩」は坂を下った付近にある筈ですが、行ってみれば定休日。仕方がないのでお店の看板だけ写真に収めて引き下がることになりました。

 代わりに入ったのは、コーヒーが美味しい「エクセルシオールカフェ」。このお店の窓際席からは表を往来する通行する人々が良く見えて、Human Watchingに最適です。有給休暇を取った平日の朝9:00前に、暖かいカプチーノを頂きながら会社に急ぐサラリーマンを見ていたら、例えようもない優越感に浸れることと思います。


「エクセルシオールカフェ」

 一休みしたら、「千鳥が淵」の様子を見てみようと思います。「千鳥が淵」と言えば桜の名所としてあまりにも有名で、改めて紹介する必要もありません。ただ気が付くのは老木が多いこと。本格的に植えられたのは千鳥ヶ淵公園が開園した1919年(大正8年)、あるいは関東大震災後の1923年(大正12年)頃であり、桜の寿命が60年と言われる中で、とうに90歳を超えています。

 「千鳥が淵」を過ぎた先、新宿通りの起点となる場所にあるのが半蔵門。彼方には、警視庁や全国の警察を取り仕切る警察庁の電波塔が霞んでみえます。手前のお堀の土手はつくしん坊や菜の花で覆われていて、のどかな春の野原そのものです。


千鳥が淵

半蔵門

 内堀通りを挟んだ向こうには国立劇場が見えました。そこでは桜の木が五分咲きの賑(にぎ)わいです。何の種類かと近くに寄って見てみれば、「小松乙女」との名札が掲げられています。どうやら江戸彼岸桜の系統で、ソメイヨシノの片親と思われている品種のようです。そのためか花の形や色合いまでもが上品で、ソメイヨシノを全国の浅間神社に祭られる「木花咲耶姫」(このはなさくやひめ)とするならば、小松乙女はその母方の草や野原を司(つかさど)る「草野姫」(かやのひめ)と云う事になりそうです。

 国立劇場の前庭には、10種類もの珍しい桜が植えられいます。ここの桜はいずれの花も品が良く、公園などで見掛ける桜とは少し違った趣です。今年は3月27日金曜から4月5日日曜までの10日間、さくらまつりが開催されることになっています。









(このシリーズは、iPadで楽しめるように設計されています。喫茶店でお茶を飲みながら、ゆるりとした気分でお楽しみください。)
東京下町を探訪する他の記事(「東京・下町自転車」)や「沖縄花だより」「紀行・探訪記」「真樹のなかゆくい」へも、是非訪づれてください。