「東京・下町自転車」(東京桜だより)
開花直前:前編


靖国神社の標準木

 東京の開花予想は3月25日、しかしながら21日の春分の日になって、「明日にも開花しそう。」との報道がありました。ウェザーマップによれば、12月に強い冷え込みがあったため、桜の花芽が比較的スムーズに休眠から覚めた地域が多かったとのこと。花芽が出来るためには寒い冬が必要ですが、「これは人間社会も同じ・・」などと能書きを垂れるのは酔っぱらったおじさんの台詞(せりふ)です。 折良く明日は日曜日、さっそく標準木のある靖国神社まで出掛けて行って、桜の開花に立会おうと思います。

 翌日の朝10:00、さっそく靖国神社に向かうことになりました。しかしながら、自宅付近の桜の蕾(つぼみ)はまだまだ「かたい」状態です。ところで、桜の蕾が「かたい」に当てはまりそうな漢字は「硬い」、「堅い」、「固い」など。それぞれの反対語は「柔らかい」、「もろい」、「ゆるい」となっていて、この場合は「固い」が正解。しかしながら、蕾(つぼみ)が「ゆるむ」とは言わず「ほころぶ」というあたりの言い回しは、ちっとも論理的でありません。


靖国神社

 靖国神社の最寄り駅、都営新宿線「九段下駅」に着きました。外の気温は15.7度、風もなく絶好の桜開花日和です。神社の境内には、多くの参拝客が訪づれています。しかしながら参道が広いため、さほど混雑している感覚はありません。入り口には大きな鳥居があって、一旦立ち止まり軽く会釈してから通ります。

 参道には、全国から奉納された日本酒の酒樽が飾られています。さらに進むと手水舎(ちょうずや・てみずしゃ)があり、手を清めることにします。柄杓(ひしゃく)を右に持ち、左手から洗うのが正式な作法らしいのですが、あまりこだわるつもりはありません。両手を洗い清めたら、最後に柄杓の柄(え)を洗って清めの儀式は終了です。

 ちなみに神道では左側が神聖であるということで、左手から洗うのはそこから来ている模様です。反対に仏教では右の方が神聖のようで、どちらもすんなり受け入れてきた日本人は、賢(かしこ)いのかいい加減なのかのどちらかです。これでは漢字ネタで人気沸騰中のIT役員芸人「厚切りジェイソン」に、「Why Japanese People!?」と大声で叫ばれてしまいます。


靖国神社 拝殿

 拝殿前には参拝客が列をなしていて、ずいぶん時間が掛かりそうです。しかしながら大切なのは心、列から遠く離れたところでお辞儀をし、しっかり手を打って参拝の儀も終了しました。

 ここで桜の標準木を探してみれば、それは拝殿手前の能楽堂横にありました。数台の報道カメラが樹木を取り囲んでいたのですぐに分かります。しかしながら咲いた花は一輪も見当たりません。その場でパソコンに記事を入力する記者や、「午後まで粘ってみます。」と携帯電話で会社に報告するADらしき人もいて、あたりはちょっとした事件現場です。

 同じ境内には江戸彼岸らしき桜も綺麗に咲いていましたが、それらに興味を示す人は僅かです。「ソメイヨシノ」へのこだわりは、外国人にはちょっと理解されない、小さい頃から桜に囲まれて育った日本人特有の感情だろうと思います。


「ソメイヨシノ」の花芽









(このシリーズは、iPadで楽しめるように設計されています。喫茶店でお茶を飲みながら、ゆるりとした気分でお楽しみください。)
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