「東京・下町自転車」(おうち麺) 前編:つけ麺

スーパーのつけ麺コーナー

 最近、気になってしょうがないのがスーパーの棚にずらりと並ぶつけ麺の数々。偶然手に取った商品はイオンのプライベートブランド プレミアムトップバリューセレクトで、価格は圧巻の350円(税抜き/二人前)、類似商品の1.2倍以上です。

 しかし、「こだわりぬいた最上質の体験を提供する」というブランドコンセプトに恥じることなく、麺の原料は厳選された北海道産小麦「きたほなみ」、添付のスープは濃厚魚介風味たっぷりのストレート出汁ということで、騙(だま)されたつもりで試してみることになりました。

 まずはトッピングとして添えるもやしを茹(ゆ)で上げます。もやしは水から茹でるのが裏技で、グラグラ沸騰したらざるにあけ、そのまま外気で冷ますだけ。さらに生活総合情報サイトAll Bboutの記事によれば、茹でる水に小さじ一杯の油と塩を加えることで食感と風味がいっそう増すのだそうです。とまで言い放っておきながら、私の場合は洗い物が大変になるので油は加えません。

 麺の茹で時間はきっちり6分30秒、時間がたったら氷水で急いで麺を冷やします。一緒に暖めていたつけ汁の封を開けてみれば、つけ麺の人気店に負けない濃厚とろとろの魚介系醤油スープで、かつおの風味が鼻腔一杯に広がってきます。

 ところで魚介という言葉の「介」の字は鎧(よろい)をつけた人の形で、貝・海老・蟹など甲羅(こおら)をもつ動物の総称だと云うことらしいです。しかしながら魚介となると、甲羅をもつ亀は含まれないが甲羅の無いイカ・タコは含まれるといった例外事項もあるようです。

 

イオン プレミアムトップバリューセレクト

 一方、麺はどうかと云えば、超極太のもちもちで濃厚出汁によくからみます。食感といい風味といい、これは浅草開化楼の特注麺にも負けない出来でした。しかも一食200gと大盛で、シャキシャキに茹でておいたもやしとのコラボレーションも最高、亀戸ラーメン便りの番外編として紹介せずにはいられなくなってしまいました。

 もう一つ気になる商品は、日清「つけ麺の達人」ブランドのクリーミーベジトマト。今年(2014年)8月18日に発売したばかりの最新作で、大胆にも肉や魚介類を使用せず野菜のおいしさにこだわった女性向けのつけ麺です。これはなかなかの異色作、さっそく話の種に試してみたく成りました。



日清「つけ麺の達人」クリーミーベジトマト
 

 パッケージ裏面の作り方をじっくり読んでみれば「お好みにより、トマト・かぼちゃ・玉ねぎ・パプリカ・マッシュルームなどを加えてください」とのこと。マクロビオティックを実践するこのつけ麺に、焼豚や半熟の煮卵をトッピングする訳にもいかず、なかなか手ごわいつけ麺を選んでしまったことに改めて気が付きました。

 マクロビオティックとは、自然に即した食生活を唱える考え方で、その始まりは「玄米菜食」。それが今では厳密に体系化され、主食は玄米・雑穀・小麦類。 肉・魚介・卵・乳製品などの動物性たんぱく質は摂取禁止で、自然主義から逸脱する化学調味料はもっての他、野菜も限りなく有機栽培や自然農耕品といった具合です。

 とするならば、ここでのトッピングはお洒落に真っ赤なパプリカと緑鮮やかなブロッコリーで勝負に挑みます。ところが近所のライフに並んだパプリカは、韓国産が一個150円もしてサントリー金麦500mlを上回る値段にびっくりしました。

 麺類は茹で時間をきっちり守ることが原則で、裏面の作り方に5分(ぐらい)と書かれている点は優柔不断(ゆうじゅうふだん)な開発担当者の責任逃れ、秒単位まで茹で時間を指定しているイオン プレミアムトップバリューセレクトの拘(こだわ)りを少しは見習って欲しいと思います。

 茹で上がった麺を氷水で急激に冷やすのは茹で具合の進行を止めるため、これは半熟卵を作る時も同じです。半熟卵はもやしと違い沸騰したお湯から茹でるのが裏技で、茹で時間が厳密に計測できるということと、殻が剥(む)きやすくなるという2つの効果が狙いです。冷蔵庫から出したばかりの冷たい卵であればきっちり7分、お湯に投入する際に卵を水で濡らしておくと割れ難いと云う報告もありました。

 はたして出来上がったつけ麺は、それはそれはやさしい味と色彩で、これまで食べた「つけ麺」とは別物です。さらにトッピングとして添えたパプリカは厳選された素材の新鮮さを効果的に演出し、どことなく海老のような風味も加わって、全体的には情熱の太陽の恵みを連想させるイタリアン。 これまで経験したことのない味わいに、戸惑いながらもぺろりと美味しく頂きました。




前編:つけめん(今いるところ) 後編:袋麺

(このシリーズは、iPadで楽しめるように設計されています。喫茶店でお茶を飲みながら、ゆるりとした気分でお楽しみください。)
東京下町を探訪する他の記事(「東京・下町自転車」)や「沖縄花だより」「紀行・探訪記」「真樹のなかゆくい」へも、是非訪づれてください。


Author:梶原正範    Mailto:hanadayori@okinawa.zaq.jp