【12月】 沖縄花だより | (後編) | |
次に向かった先は観光地としての大石林山(だいせきりんざん)、沖縄の代表的なパワースポットです。大石林山を遠くから眺めれば、お釈迦様の横顔に似ているという話もありますが、ここは自然崇拝が基本の沖縄ですからお釈迦様の出番はありません。前編で登った安須森御嶽(あすむいうたき)はお釈迦様の唇あたり、これから向かおうとする大石林山公園はこの山の裏側です。 車は入り口の駐車場において、公園中央にある精気小屋へはシャトルバスで向かいます。行ってみればとても綺麗に整備された公園で、園内にはツワブキの黄色い花が咲き乱れています。ツワブキは典型的な冬の花、この時期に那覇や南部ではまだ蕾であったことを考えると、ここはやはり北なのだなぁと感じる瞬間です。 |
大石林山公園 宇佐浜海岸とヤンバルクイナ展望台 |
公園内には、巨岩・石林感動コース・美ら海展望台コースだけでなく、車椅子でも楽しめるバリアフリーコースがあって、なかなかの配慮とお金を掛けた施設であることに関心します。 まずは巨岩・石林感動コース、いろいろ名前のつけられた巨岩・奇岩が並びます。卑弥呼岩と云うのもありますが、これは沖縄創造の神「アマミキヨ」を差し置いて、たいへん失礼な命名だと思います。美ら海展望台コースからは沖縄北端の辺土岬、そしてアマミキヨが上陸したとされる宇佐浜海岸が一望できました。 最後はバリアフリーコースを経由して亜熱帯自然林コースで帰ります。道端には、小さな名前の知らない可憐な花たちが迎えてくれました。3月にはこの道にイルカンダという花がシャンデリアのように咲くということで、それを聞かされたらまた来なくてはいけなくなりました。 次に向かう先は、美ら海展望台コースからチラリと見えたヤンバルクイナ展望台。老朽化により閉鎖されているにもかかわらず、たいへん人気の展望台です。この時も、数組の観光客の姿がありました。ここからは、辺土岬とその手前には「アマミキヨ」が上陸したとされる宇佐浜海岸が間近に臨め、知る人ぞ知るとてもマニアックな名所のひとつになっています。 |
辺土岬まで足を伸ばしてみれば、ここからは午前中に登った安須森御嶽の峰々が、陽の光を背にして神々(こうごう)しい姿見せています。初めて立ち寄った沖縄の北の果ては、神の精気溢れる心洗われる場所でした。 |
備瀬の神アシャギ 備瀬の拝所(竜宮神) |
辺戸に別れを告げて次に向かう先は本部町備瀬、美ら海水族館すぐ近くの「備瀬のふくぎ並木」として有名な場所です。村の入り口には観光用の牛車(ぎっしゃ)がスタンバイしていますが、竹富島のような活気はありません。 村の中に入ると公民館があって、その向かいには神々を招いて祭祀を行なう立派な神アシャギがありました。アシャギの奥には丸太の木が一本横たわっています。これこそ噂の聖木(アフタムトゥギ)で、招かれた神様達はここに腰を下ろして飲み食いします。 ここから海に出る小路を歩いていくと、海岸の手前に小さな祠(ほこら)がありました。海の向こうにみえるのは伊江島で、手前の灯台が備瀬崎の先端です。この岬もまたアマミキヨが上陸したとされる噂の地、岬の先端は陸地と離れた小島になっていてミーウガンと呼ばれています。そしてその島は、草木一本持ち出すことのならないこの地域の最高聖地でありました。 あらためて先ほどの小さな祠(ほこら)に向かってお参りしようとしたとたん、自分のお尻が備瀬崎に向いてしまうことに気がつきました。聖地に対して、こんな失礼があってはいけません。 |
その場にしばし佇(たたず)みiPadを駆使して調べてみても、簡単に真相は掴めません。最後に行き着いた仮説は「この祠の前で拝む者の背中には、神が乗り移ってくる」と云うもの。これで後ろ向きの理屈は解明しましたが・・・とんでもない世界に足を踏み入れてしまった気がします。 さすがにここでの御参りは諦め、有名な「フクギの並木通り」を通って岬の先端に向かいます。岬の駐車場に出たとたん、あたりの景色は大きく開け青く透き通った海と空が広がりました。 駐車場の中央には、備瀬崎に向いた香炉が設置されていて、ここであれば何とか普通に拝めます。[備瀬の海岸] 12月の沖縄花便りは、いつのまにかアマミキヨの足跡を探る旅になってしまいました。アマミキヨ伝説は、沖縄本島および近隣離島のいたるところにあって話題にいとまがありません。沖縄花便りもちょうど一周したことですし、アマミキヨの足跡を頭の隅に描きながら、一年分の花便りを読み返してみてください。[沖縄花だより] |
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(このシリーズは、iPadで楽しめるように設計されています。喫茶店でお茶を飲みながら、ゆるりとした気分でお楽しみください。) ついでに、他の「沖縄花だより」や「紀行・探訪記」、「真樹のなかゆくい」へも、是非訪づれてください。 |