【4月】 沖縄花だより (前編:「デイゴサク」)



 今日は4月6日土曜日、朝から全国的に荒れ模様の天気です。 昨日5日は清明(せいめい)で、「万物ここに至って皆 潔斎(けっさい)なり」、まさにすがすがしい気の満ちた草木溢れる季節になりました。

 この時期沖縄では、清明祭(シーミー)と呼ばれる祭事が催されます。門中(むんちゅう)一族がお墓の前に集まって、お重に詰めた美味しい料理をみんなで頂きます。よく行くてんぷら屋さんの店内に「清明祭のご相談に応じます!」という手書きポスターがあったので、「清明祭はいつ頃までやっているんですか。」と訪ねたら、一般的に4月一杯はやっているそうです。

 沖縄で4月といえば、譲ることができないのは県の花「デイゴ」(梯梧)です。那覇警察署の横、与儀公園には沢山のデイゴの木が植えられていて、気象庁の標本木もその中にあります。例年の開花日は4月1日、今年は桜の開花も早かったので、だいぶ咲いたに違いありません。

 期待を胸に標本木を訪ねてみれば、まだ一輪の花も咲いていません。琉球大学の合格電報は、「デイゴサク」だそうですが、今年の入試は難関だったのかも知れません。 一方で、デイゴのたくさん咲く年は台風の当たり年という噂もあって、なかなか微妙なところです。あたりを窺(うかが)ってみれば、花の咲いている木もいくつか見られます。

 後で新聞を開いてみれば、開花宣言は既になされていて平年より5日も早い開花だったそうです。そうだとすれば、標本木の立場はどうなっているのでしょうか。 実は気象台も抜け目無く副標本木を用意しておいて、どちらかが咲けば開花宣言するのだそうです。[デイゴ]



デイゴの標本木

デイゴ並木

デイゴの花


 帰りがけのモノレール沿いの道で、ふと上を見上げると椰子の木に赤い実が鈴なりになっていました。おそらくマニラヤシだと思います。椰子の木でイメージするのはココナッツですが、ココナッツが採れるココヤシは熱帯地方の植物で、亜熱帯の沖縄本島ではそうそう見かけることはありません。

 途中に立ち寄った奥武山公園では、ビロウの木が黄色い雄花を一杯に咲かせていました。沖縄ではクバと呼ばれていて、あのクバ笠やクバ扇はこの木の葉を編んで作られます。 また、天の神様はこの木を伝って地上に降りて来ると信じられており、沖縄の御嶽(うたき)や拝所(うがんじゅ)ではよく見かけます。

 4月は、ずいぶん地味な花ばかりになってしまいました。地味花ついでにモンパノキ(紋羽の木)。糸満の玉城保太郎が考案したとされる水中眼鏡(めがね)がこの木で作られていたという話も、輪をかけて地味な話題です。しかしながら南西諸島や小笠原でしか見ることのできないモンパノキ、水中眼鏡の曇り止めや虫や魚に刺された時の毒消しにも使える優れものなのだそうです。



マニラヤシの街路樹

ビロウ(沖縄名:クバ)

モンパノキ



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(このシリーズは、iPadで楽しめるように設計されています。喫茶店でお茶を飲みながら、ゆるりとした気分でお楽しみください。)
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